カンボジアの医療
カンボジアは、熱帯モンスーン気候に位置し、年間平均気温はプノンペンで27~28℃です。
季節は大きく6~10月の雨期と11~5月の乾期に分かれ、3~5月が最も暑く日中の気温は40℃に達します。
○概況
○主な病気
○カンボジアでの医療事情
○カンボジア王国における保健医療の現状
エイズという病気とその現状
○エイズ(AIDS)とは
○増えている感染者・患者数
○日本における感染者・患者数
○HIVは感染力が非常に弱い
○HIV検査
○感染していたら
○HIV感染者の対応
カンボジア王国
面積 : 18.1万K㎡(日本の約半分)
人口 : 13.8百万人
首都 : プノンペン
民族 : クメール人(90%)、ベトナム人(5%)
公用語 : クメール語
宗教 : 仏教(上座部仏教)
産業 : 農業(稲作)、工業(天然ゴム、縫製品)
通貨 : リエル(1ドル=約4,092リエル)
<概要>
カンボジアは、大河メコン川と東南アジア最大の湖であるトンレサップ湖があり、かつてインドシナ半島を支配したアンコール王朝の世界遺産アンコール・ワット遺跡があります。
1953年、フランス統治から独立したものの、ベトナム戦争やクーデターなどで国内は安定しませんでした。さらに、1975年には共産主義政党クメール・ルージュの独裁者ポル・ポトの政権が成立して内戦が激化し、約200万人が虐殺されたといわれています。その後、国連が紛争の解決に乗り出し、1993年に新生カンボジア王国が誕生して現在に至っています。
年齢構成は、内戦の影響で14歳未満が50%弱、15~64歳が約50%となり極端に大人が少ない状況です。多くの家庭が分断され崩壊して、母親が働き、子どもも働かなければなりません。5~17歳の子どもの約半分が働いているといわれています。
多くは農業や漁業ですが、都市部では物を売ったり、ゴミの回収をしています。15歳以上の識字率は約70%で教育は無料ですが、中学生は制服費、登録費、テスト代などの経費がかかり学校に行けない原因になっています。
平均寿命は57.4歳、で、15~49歳人口のうち、HIV感染者が2.6%、孤児が67万人いると推定されています。この中には両親をAIDSでなくした子どもたちも数多くふくまれます。また、約80%の人が明かりを灯油にたよっています。そして、1日2ドル以下で暮らす人は約70%と推定されています。そして、人身売買の犠牲になる子どもたちもいます。
カンボジア王国 【カンボジアの教育制度】
国民一人あたりのGDPは約297USドルと推定され、年間成長率は約5%です。国民の約36%の収入は一日あたりは1ドル以下であり、非常に厳しい生活となっています。
大人の識字率は男性80%、女性57%で、高等教育をうける女性の割合は非常に低くなっています。
義務教育は9年間
カンボジアの教育制度は日本と同じ6・3・3制で、最初の9年が義務教育です。6歳から14歳の子どもたちは学校に通うことになっていますが、しかし、多くの小・中・高校で教室や教師が不足しています。
そのため授業は午前と午後に生徒を分けて、二部制で行われています。生徒は空いた時間は、プライベート・スクールで英語やコンピュータを勉強したり、家の手伝いやアルバイトをしています。
向上しない就学率
義務教育とはいっても実質は、小学校の就学率でも84%、中学校の就学率にいたっては17%、というのが現状です。未だに基礎教育を受けられない子どもも大勢いて、6歳から学校に通うことができる子どもの割合は低くなっています。また出席率も悪く、特に小学校低学年のうちに落第して何度も同じ学年を繰り返す子どもが多く、小学校1年生に入学した子どもが5年生まですすむ割合は45%にとどまっています。
子どもたちが学校に行けない理由は、日々の生活が精一杯で、文房具や日々学校で支払うお金を子どもに持たすことができないのです。カンボジアの公立小学校・中学校は、無料です。しかし、プリント代100リエル・試験代500リエル(1ドル=4000リエル)など、様々なことにお金が必要になるのです。
カンボジアの農村部では自給自足で現金収入が少なく、金額に換算しても都市部の収入の1/3以下にすぎず、小学校卒業率が1割にも満たない村もあります。学校が遠くて通うことができないことや、家庭が貧しく生活のために子どもたちが労働力として借り出されてしまうことなどが理由としてあげられます。
親が稲作をしている場合、田植えや稲刈りの時期には、子どもたちも一緒に手伝います。そのため、学校の欠席が多くなり、学校に戻れなくなったりもします。さらに、兄弟に幼い子どもがいると、上の子どもたちは、面倒をみるため、学校に通えなくなるのです。
就学率=生徒総数÷当該年齢の総人口×100
低賃金で教師の不足
先生の不足は大きな問題です。先生の月給は毎月30米ドル。生活にはとても足りないので、アルバイトをせざるを得ない先生もたくさんいます。また、本来なら大学を出た人が先生になるのですが、実際は小学校や中学校を出た人から先生を育てなくてはならない状況が続いています。
カンボジア国民の平均年収は、年間約380ドル。これは日本の10分の1の水準です。また、国民の10人に4人が1日1ドル以下の生活を送る貧困層と言われています。
学校教員の基本給は最低で月30ドル弱、最高で60ドルです。1年目は研修期間に当てられ、基本給のみの支給となります。新任の教員が給料をもらえるのは早くて4ヶ月目で、最悪のケースでは1年間もらえない先生(新任だけではない)もいるようです。
本来なら、ダイレクターと呼ばれる学校の管理を行なう人によって先生の元に給料が届けられるのだが、彼らの懐へと消えてしまうケースが少なくないようです。
しかも給料だけでなく、PAP(Priority Action Program:優先行動プログラム)の枠で支給される学校施設維持費や備品購入費の予算をも分捕ることがあるようです。そのため備品が不足した場合などには、子どもたちから金銭(または物資)を徴収せざるを得なくなってしまう。この結果、学校に行けなくなる子どもも出てくるといいます。
学校生活
子どもたちの顔は真剣そのもので、勉強をできる喜びに満ち溢れています。日本のように1人に1つずつ机と椅子があり、1人に1冊教科書があるわけではなく、長椅子にぎゅうぎゅう詰めに座り、教科書も何人かで1冊を見ています。そのような環境でも子どもたちは一生懸命勉強し、それに満足しています。
プノンペン市にあるプレアッ・シソワット中高等学校は同国で最も歴史ある名門校ですが、授業は二部制です。1クラスは約50~60人で生徒総数は6,206人です。ただし、家庭の事情などで退学する生徒も多く、上の学年に行くほど1クラスの人数が少なくなります。
中学3年生(第9学年)と高校3年生(第12学年)には、卒業試験があります。高校卒業試験は大学入試資格試験も兼ねており、2年目に不合格になると試験資格がなくなってしまします。
必修科目は数学、クメール語(国語)、歴史、英語、化学など。選択科目は体育、芸術、農業がありますが、機材や教師の不足で、限られた人数しか受講できないそうです。
▲遊ぶ子どもたち
▲子どもたち
▲勉強をする子どもたち